令和4年3月 添え状より

太陽の光が一層輝きを増して、植物がいっせいに芽吹く春がもう目の前です。もうすぐ冬の寒さを耐え忍んだ桜や菜の花など、多くの植物が待っていましたと言わんばかりに咲き誇り、春は気持ちを明るくしてくれます。
皆さまは如何おすごしでしょうか。 

 さて最近、どんなテレビ番組をみていますか?
 ある方は、土曜日夕方6時からの「人生の楽園」が最高! 見ているときに〝しみ
じみしあわせを感じる″と話されていました。 土曜日の夕方、一週間の仕事を終
えホッとしながら、まだ成長盛りの子供達に囲まれて家庭円満なお父さんの姿、
「楽園」を見ながら、将来は奥さんと有機農業をやろうか、とか話している姿まで
浮かんできて、こちらまでほっこりした気分になりました。

この〝ほっこり感″で、つい日曜日になると、私がみているのが『ポツンと一軒家』
です。日本各地の人里離れた場所に、なぜだかポツンと存在する一軒家。そこに
住む人物の人生にも迫っていく番組ですが、ほとんどが高齢者です。
高齢者の社会参加や活躍が求められている昨今ですが、そこにすむ高齢者の
水・電気・ガスだって通っているとは限らない不便な暮らしを、不便にしない暮らし方に感動してしまいます。「ポツン」に出てくる方たちというのは、何でも自分の力でやってのける。家を自分で建てたとか、山を丸ごと買って手入れをしたとか、自分のような動くことが苦手で、もう何一つまともにできなく感じている身にも、番組に出てくる人間のスケールの大きさに驚かされっぱなしです。孫が「ポツンと一軒家」に遊びにくることも多く、ハンモック、ブランコ、果ては秘密基地など孫や大人でも喜びそうな遊具を自力で作り上げてしまう。

  たまに食事シーンが映し出されることもあるのですが、ニワトリが産んだばかり
の新鮮な卵をご飯にかける、取ったばかりの大きな椎茸を焼く、釣ってきたばかり
の魚をさばいて調理する、ただそれだけの素朴な料理が、この上なく美味しそうに
見えてしまいます。

一部の人々から見たら不安と不満だらけの不便な暮らしも、そこに生きる人々
の穏やかな表情が、「幸せとは何か?」という問いに対する何よりの答えに見えます。 とくに元気で明るく、苦労を苦労として感じさせないお年寄りたちは、私たちが忘れかけている古きよき日本人の姿に見えるのです。

気温の変化で体調を崩しやすい時期ですので、どうぞくれぐれご自愛ください。                    敬 具
                   令和4年3月7日    総施設長 神原美智子