令和4年2月 添え状より

二月に入り、節分、立春と過ぎ、春はもうすぐそこまで来ています。庭の「侘び介椿」のつぼみも日ごとにふくらんで、春を待つ元気な生命力を感じます。   皆さま如何お過ごしでしょうか。
  先日、皆さまにもお願いいたしましたが、新型コロナについて、現在(令和4年2月10日)、岩手県の人口10万人当たりの直近1週間の新型コロナウイルス新規感染者数 が88.2人になりました。しばらくの間は、安全地帯での行動を皆で守っていきたいので、よろしくお願いいたします。

 現在、北京オリンピック真っ最中ですが、フィギュアスケート、おしくも4位でしたが、宮城県仙台市出身の羽生結弦(はにゅう・ゆづる)選手の2月10日の力強い演技、すばらしかったですね。最後まであきらめず、真摯(しんし)に  “神の領域”と言われる4回転半に挑戦し続けた姿、成功することと同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上に心が揺さぶられました。
前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)成功を「最終目標」に掲げて、ショートプログラムを8位で迎え、前人未到の異次元4回転半ジャンプに挑戦。転倒はしたものの、回転不足の判定ながら国際スケート連盟(ISU)から初の認定を受けることができました。
14年ソチ、18年平昌大会を2連覇した羽生選手の3度目の五輪は4位だったけれど、「絶対アクセル降りる、回り切る」。昨年より助走を長くし、未体験の速度で今回は回った、といいます。転んだ時、場内に響く「あぁ」。しかし、右足だけで降りた! ずっと両足でしたが、逆境で進化し、前日に捻挫し、       
感覚がなかった右足で降りた!  

今回、ISU認定の着氷記録をつくり、五輪史を塗り替えました。 「一番(成功に)近かった。これが4回転半の速度なのか。(片足着氷は)危険すぎるかもしれない、人間にはできないのかもしれない。」「脳振とうで死ぬんじゃないか」。生死を意識して4回転半の練習を重ね、世界で初認定されました。
羽生と同じように体操個人総合で五輪3連覇を目指した内村航平は、引退会見で「金メダルよりもリオから東京を目指した4年間が宝物」と答えました。勝ち続けることができなくなって苦しんだことこそが、貴重な財産だというのです。

つまり勝ち続けた先人たちが口にするのは「負けることの大切さ」。「その後の長い人生で、必ず意味を持ってくる」と。「天と地と」の曲に合わせて舞った羽生選手。今後、「金メダルをとった五輪」と「思い通りにならなかった五輪」の経験はきっと生きるに違いありません。

 寒気冴え返る時節柄、ご自愛専一にお願い申し上げます。  

                  令和4年2月11日    総施設長 神原美智子